スタートライン




自分の中にこんな感情が在るなんて知らなかった。
苦しくて狂おしくて、自分ではどうしたらいいのか全然わからない。
この感情が何処から来るのか、どうしたら楽になるのか分からないんだ。


「ぁ、王子!」

振り返ると黒い女王騎士の装束に実を包んだカイルが駆け寄ってきた。
「王子〜見てくださいよ!」
そう言うとカイルはクルクルとその場で2・3回、回って見せた。
「どうですか?似合いますか?」
ニコニコと嬉しそうに問い掛けられた。
「おめでとう」
困惑しながらも笑顔で答えた。
カイルは今日から女王騎士の正式な騎士となった。
それはつまり女王のためにカイル自信の命をかけること。それは女王騎士として極当たり
前のことなのに素直に喜べないでいた。
「王子?どうしたんですか?調子でも悪いんですか?」
心配そうにカイルの目が向けられた。
「大丈夫だよ、ちょっと考え事してて、ありがとう」「考え事って何か悩み事でもあるんですか?」
「本当に大丈夫だよ、心配かけてごめんね」
笑顔でそうつげるとカイルはオレでは役に立てないんですか?と食いついて来た。本当に
大丈夫だからと念を押すと、カイルは悩み事なら人に話すと楽になりますよ、と笑顔で続
けた。
「オレ以外と聞き上手なんですよ。話の内容は誰にも話しませんし、大船に乗ったつもりで話してください」
カイルはポンと胸を叩いてえっへんと胸を張った。
どうしよう、大変なことになった。悩みの種である当人からその悩みを相談しろと迫られ
ている。
この思いを簡単に告げられたならどんなに楽な事だろう。興味深々っといったカイルの視
線が痛い。とりあえず出来るだけ話を誤魔化してその場をしのごう。
そう決意をし、場所を変えないかい?との提案にカイルも快く応じた。


太陽宮は今日も麗らかな太陽の日差しに包まれていた。その裏に一本の大きな老木があった。
カイルは「いい場所があるんですよ」とココまで王子を導いてきたのだ。
「どうですか?いいところでしょ?」
「うん、こんなところがあったんだ」
チチチッと小鳥が囀り老木の木陰からは日の光がサラサラと降り注いでいた。
「で、王子の悩み事って何ですか?」
ニコニコと笑いながらカイルは話を本題に戻した。
「カイルはなんで女王騎士になろうと思ったの?」
王子の問いにカイルは一瞬怪訝そうな表情を見せた。
「王子、悩みって本当にソレなんですか?」
カイルの問いに王子はコクンと頷いて答えた。
カイルは「ん〜っ」と困った表情をしたものの照れくさそうに答えた。
「オレは、アルシュタート様も、フェリド様も、サイアリーズ様も、王子も、
姫様も好きなだから、女王騎士になろうと思ったんです。」
そう言い切るとカイルはヘヘヘっと頬をかいた。
なぜだろう、その言葉を素直に嬉しく受け取れなかった。
それどころか胸の奥がズキンと痛む気がして王子は眉間に皺を寄せた。
ソレを見たカイルは大丈夫ですか?とこちらを覗き込んできた。
何も知らない青い瞳と目が合った。それだけで胸の奥がさらに締め付けられる気がして思わず目を閉じてしまった。
「王子!?本当に大丈夫ですか!?何処か悪いんじゃないですか!?」
慌てて誰かを呼びに行こうとするカイルを止めて、「たいした事じゃない大丈夫だ」と告げた。
何度も何度も必死にカイルはこちらを覗きこんでくる。何度大丈夫だと言っても信じてく
れない。自分か掘った穴に埋まってしまいたいくらいだ。その時誰かがカイルを呼ぶ声を聞
いた気がした。
「カイル、今誰かが呼んでなかったかい?」
そうきいた瞬間カイルが「あっ」と声をあげた。
「カイル殿、こんな所で何をなさっているのですか?」
「げっ、ザハーク殿…」
カイルは少し後ずさった。
「カイル殿こんな所で油を売っていたんですか?」 そう告げたザハークの目は完全に怒っていた。
「ザハークごめんね、カイルを借りてて」
もう一度ゴテンネと付けたしその場に立ち上がった。
「ところで、カイルに何か用事でもあったの?」
「忘れる所でした。カイル殿、フェリド様が貴殿をお探しだ」
「えっ、フェリド様が!?」
フェリドの名を聞いたカイルの顔色が嬉々としたものに変わって行く。また胸の奥がチク
ンと痛んだ。
「ザハーク殿、王子体調悪いみたいなんで宜しくお願いします」
「王子どうなさったんですか?」
今度はザハークに覗き込まれたが何も感じなかった。
「大丈夫だよ、カイルは心配性だね」
今度は上手く笑って見せることが出来た。
「本当ですか〜?あんまり無理しちゃダメですよ!」
「うん、わかったよ」
笑顔で答えると「絶対ですよ」と念を押されてしまった。
「それよりカイル、父上に呼ばれてたんじゃなかったっけ?」
「あっ、そうだった。ジャ、俺いきますね〜!」
いってきますと付けたしカイルは元気に走り去っていった。
「王子体調は本当に大丈夫なのですか?」
「ああ、本当に大丈夫だよ。ザハークにも心配かけちゃったね」
もう大丈夫、自分はきちんと笑えている。
「顔色も良さそうですし、もしもの時はきちんと医務室へ出向いてください。よろしいですね?」
「わかったよ。本当に心配かけてコメンネ」
「いえ、それでは私はこれで」
ザハークは一礼するとその場を後にした。


誰も居なくなった木陰で王子は一人「はぁ〜」とため息をついた。
カイルと目が合っただけでどうしようもなく胸が苦しかった。ザハークの時には何も感じなかったのに。
どうしたら、どうすればいいんだろう。
「やっぱり医務室に行ったほうがいいのかな?」
もう一度大きなため息を付いて王子はその場を立ち去った。






+++++++++++++後書きと言う逃げ道+++++++++++++++
王カイと言うよりも、王子→カイルって感じです。
なんていうか、いつも勢いだけで書いているので、
何がなんだか分からないですねOTZ