1・雨降る中




ファブレ伯爵亭は昨日から降り続いている雨音に包まれていた。
ファブレ伯爵と婦人は二人になった息子のタメに、
わざわざ家を改築し、ルークとアッシュ二人のための部屋を増築していた。


「どうした?外など見つめて」
アッシュの声にルークはハッとした。
カップを二つ持ったアッシュの姿を見てルークは自分が物思いにふけっていた事を初めて知った。

「いやなんていうかさ、アッシュと初めて会った時もこんな感じで雨が降ってたなぁってそう思ってさ」
ぼんやりと外を眺めるルークを不思議に思ったのかアッシュは声をかけたのだった。

コトリと二人分のカップが机に並ぶ。
ソコにはアシュこだわりのブレンドコーヒーが注がれていた。

「あの時は自分が何者で、どんな存在なのか、どうして生まれたのかさえ知らなかった」
そうい言うとまた外を見つめたまま続けた。
「そしてアッシュに出会ったんだ。」
「そうだな」
アッシュは合いの手を入れた
「最初は不気味で、気持ち悪くて、一体何がなんだかサッパリ分からなかった」
ルークはコーヒーを飲み下すとテーブルの反対に腰を下ろしたアッシュに視線を向けた。
「まさかあの時はあんな事になるなんて思っても見なかったし、
こうしてアッシュと話が出来るようになるなんて微塵も思ってなかった」

「最後の時だって二人でこうして帰ってこられるなんて夢のまた夢だと思ってたでも、俺達は今こうしてココにいる」
ルークはまた雨の降る外へと視線を向けた。
「それにさ、アッシュとこんな関係になれるなんて思っても見なかった!」
アッシュは急に振られた台詞と、目の前に移るルークの顔に驚いた。
「なっ!屑が何を言ってやがる!」
赤面しながらアッシュは乱暴に手にしていたカップを机の上に叩き付けた。
だが、アッシュはルークから向けられる視線をむげに外そうとはしなかった。
「アッシュ、大好きだよ」
「なっ」
素直に向けられる視線、素直に向けられる言葉。
いつもその視線と言葉に犯行できないでいる自分がもどかしい。
逃げられない、いつもそう思い知らされる。
外せなくなる視線。

いつからだろう、この視線が、言葉が怖くなったのは。
いつからだろう、この視線と言葉が嬉しくなったのは。

ルークの指になぞられる輪郭、優しく触れる唇。
どれもが甘くて切なく感じる。
逃げられない、もぅこの思いからは、そう思い知らされる。
薄く開いた唇に進入してくる舌に抵抗できずに受け入れる。
只々、雨の音が部屋の中で響いている。


フッと唇が開放される。
「なぁ、アッシュ外出てみねぇ?」
アッシュは一瞬何を言い出したのか分からなかった。
「なぁ、もう一度初めての出会いってやってみねぇ?」
ルークの言葉が理解できずアッシュは眉をしかめた。
「だから、もう一度初めてあったときみたいに外、出てみようぜ!」
嬉々としてルークはアッシュの手を引っ張って中庭に出た。
傘も差さず只外へと。


ぬれる髪、ぬれる服。
でも、あの時とは違う感覚。
「なぁ、手繋いでいいか?」
「メイド達に見られたらどうする!?」
アッシュの心配をよそにルークはアッシュの手を握り締めた。
そしてアッシュの額に自らの額を当てた。
「愛してるよアッシュ。今までも、そしてこれからも」
その言葉にアッシュは何も言葉を返す事は出来なかった。
雨がこんなにも暖かい物だとこのとき初めアッシュは知った。









-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+後書きという逃げ道-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+
えーいかがだったでしょうか?
ルクアシュ初書きssです。
私は両名帰還希望者なので、ED後、二人には幸せになってほしいなと思いながら
このssを書いておりました。
私個人的な意見としては、あのエピローグがなかったら、、、なんて思います。
あのエピローグがED後のssが多い理由の一つではないかと思います。