2・通信



「アッシュ!」
何度声をかけても振り返る事の無い背中。
どんなに追いかけても、地面がまるで泥のように埋まって前に進めない。
「アッシュ!」
そんな俺の目の前で、濃くにごった赤い海の中へ、
彼は一歩一歩歩みを進めていった。
追いつきたいのに追いつけない。
止めたいのに止められない。
行かせたくない、行かせたくないから思いっきり叫んだ。
「アッシュ!」


ゴス!
っと深夜の寝室を似つかわしくない音が鳴り響いた。
「げふっ!」
な、何事か!?
訳がわからぬまま重く苦しい物がみぞおちを襲った。
その衝撃でルークは目を開けた。
そしてそこで目にしたのは眉間に皺を寄せたアッシュの姿だった。
その様子をみるとかなり怒っているようなのだが、
ルークは何が何なのかサッパリ分からないといった顔をしている。

「貴様は何を考えているんだこの屑が!」

一体何を怒られているのか相変わらず分からない。
アッシュは何を怒っているのだろう?
そう思って素直に疑問を口にしてみた。

「アッシュはなんでそんなに怒ってるんだ?」

ベットから上半身を起こし、ベットの横で仁王立ちになっているアッシュを
半ば覗き込むように小首をかしげて疑問を口にした。

「なんだ、気付いていなかったのか。相変わらず見事な屑っプリだな」

そういわれてもやっぱりアッシュが何を怒っているのか分からないのだ。
そうすると、仕方が無いなという様子でアッシュは口を開いた。

「寝言は口で言え、人の頭の中で叫ぶな!」

思いっきり怒られた。
どうやらいつの間にか通信が開いていたようである。

「あまりにも五月蝿いから目が覚めちまっただろうが!この屑が!」

どうやらそのお蔭でアッシュは安眠を妨害されたらしい。

「ごめん」

ルークは素直に謝った。
自分のせいでアッシュの安眠を妨害してしまったわけだ。
ソレよりも気になることはあのい夢だ。
さっき見ていた夢はどちらの夢だったんだろう?
あの赤く濁った海の中へ進んでいくアッシュの姿が鮮明に思いだされる。

「なぁアッシュ、さっき見てた夢って覚えてるか?」

不思議に思ったルークは素直に疑問を口にした。

「そんな物覚えているか!お前の声が五月蝿すぎて頭がガンガンしてるんだよ!」

アッシュの怒りは依然治まる様子が無い。

「ごめん、でも本当に冷たくて苦しくて寂しい夢だったんだ」

そう言うとルークはアッシュに両手をむけ、自らに抱き寄せた。

「おい、まて、この体制は苦しいんだが?」

突然抱きすくめられた事に驚いたのかアッシュは少し戸惑っている様子だった。
アッシュ一度ルークの手を離すと、近くにあった椅子に手を掛けソコへ座った。

「で?結局なんだったんだ?俺はお前の寝ぼけに巻き込まれただけなのか?」

「ヴ、、、まぁ、そうなんだと思うけど。。。」

ルークはやや口ごもりながら答えた。

「なぁ、アッシュ?」
「なんだ屑が」

やや寂しげなルークの目にアッシュは怒りをそがれた様子だった。

「もう一度ギュってしていいか?」
「は?」

アッシュは急に耳まで赤くしておののいた。

「何を言ってやがる屑が!餓鬼はさっさとねやがれ!」

そうい言い椅子から立ち上がろうとしたアッシュをすかさずルークは捕まえた。

「お願い。もう一度だけ、もう一度だけでいいんだ」

アッシュを感じたい、体温を、その鼓動を感じたい。
素直にそう思った。
だから傍を離れようとしたアッシュを引き止めた。

まるで小動物のような目で見られては反抗など出来様もない。
アッシュは仕方なくその要求にこたえることにした。

「アッシュ、何処にも行かないよな?ココにいるよな?」

何を言っているんだこいつは、と思いながらもアッシュは短く答えを返した。

「ぁぁ、俺はココにいる、だから安心しろ」

その答えを聞いてからスグ、抱きかかえられていた腕から力が抜け、
小気味よい寝息が聞こえてきた。

まったくなんなんだ、と思いながらも逆らう事のできない自分に、
不甲斐なさを感じながらもアッシュはルークを布団の中へ戻してやった。

コイツはまだ怯えているのか、最後ローレライは俺達に時間を与えた。
普通の人として過ごす時間を。
しかし、まだコイツは信じ切れていないのだな。
そっと髪をなで、アッシュは隣に置かれている自らのベットへと戻っていった。



-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+後書きという逃げ道-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+
通信というお題でしたが、なんかちょっとかけ離れてる気がしますね、
しかもルクアシュで書いたつもりなのにアシュルクにも見える件。。。orz
マダマダ勉強が必要ですね><
しかも前回の更新からかなり時間が経っている罠。。。
元々案はあったんです。本当ですよ?
でも、なかなか書き始めることが出来ませんでしたが、
今日思い切って書いてみることにしました。
いかがだったでしょうか?
これからマダマダ精進せねばならないところが沢山ありますが、
次のお題も頑張ってクリアしていきたいと思います☆