タイミング
「カイル様おはようございます」
「おはよ〜ルセリナちゃん」
「カイル様、王子がパーティーにお呼びですよ」
「はいは〜い♪」
笑顔で答えるとカイルはその場を後にした。
「ところでルセリナちゃん、今日のパーティーって女の子誰かいる?」
「いえ、いらっしゃいませんけど」
それがどうかしましたか?と苦笑いしながらつなげた。
「男性だけのパーティーってむっさいな〜と思って」
そう答えた瞬間カイルは王子と目があった。
「ルセリナちゃん、もしかして王子一人だけ?」
「ぇぇ、そうでしたけど?」
しまった、そう思った時にはおそかった。
「ルセリナ、カイル疲れてるみたいだからパーティーからはずしちゃってくれるかな」
「ぇ、ぁ、でも・・・」
「いいからいいから」
慌てるルセリナに新たなパティーのオーダーをかけていく。それも女性ばかりだ。
「あとはジーン先生と、ビッキーをお願いね。」
「あ、あの、王子?」
「ああ、カイルはいいよ、疲れてるんだよね?部屋で休んできなよ」
綺麗な笑顔でそう答えると揃ったメンバーで城外へ出てしまった。
「ルセリナちゃん、もしかしなくても王子怒ってたよね…」
苦笑いをしながらルセリナへと視線を落とした。
「ぇぇ、たぶん」
ルセリナは困惑しながら答えた。
「だよね」
はぁ〜と大きなため息を残しカイルはルセリナの元から立ち去った。
はぁ〜、今日何度目のため息だろうか。
カイルは王子に謝るタイミングを完全に逃したまま、沈む夕日を眺めていた。
「カイル殿、どうされたのですか?」
不意に声をかけられカイルは不覚にも驚いてしまった。
女王騎士とあろうものが…その思いからもさらに大きなため息がでてしまった。
「何か悩み事でもお持ちですか?今日一日悩んでいらっしゃったようだが?」
ダインはそういうとカイルの隣へ腰をおろした。
「そんなに出てましたか?」
「ぇぇ、アレだけ大きなため息をついていらっしゃればさすがにね」
「あはははは、そうですよね〜」
そう言うと、ため息とともに視線を湖へ戻してしまった。
「で、悩み事って何ですか?私でよければ相談に乗りますが?」
色恋沙汰は苦手ですがね、とダインは続けた。
「実は今朝方王子を怒らせてしまって…」
頬をかきながらカイルは答えた。
「謝りには行かれていないのですか?」
「いや、それがタイミングが合わなくてついにはこんな時間ですよー」
はぁーとまたため息をついてしまった。
「タイミングですか、タイミングを待っているからいけないのではないですか?」
ダインにそういわれ、カイルはへ?っと素っ頓狂な声を出してしまった。
「タイミングなど待っていないでこちらから出向いてしまえばいいのではないですか?」
カイルはハッとした様子で立ち上がった。
「そうですよね、待ってちゃだめなんですよね!」
「王子は先ほど部屋へ戻られたようですよ?」
ダインはそういうと立ち上がった。
「ありがとうございます、ダイン殿!俺行ってきますね!」
カイルは一礼し笑顔でその場から走り去っていった。
コンコンとノックし、いつもの調子で声をかけた。
「王子?入りますよ〜?」
返事を待つことなくカイルは部屋の扉を空け中へ入った。
「あれ?リオンちゃん?」
「ぁぁ、カイル様いらっしゃいませ」
部屋の中に居ると聞いた王子の姿が無かった。
「王子いないの?」
「今しがたお風呂へ行かれましたよ?」
「え〜!?ホントに〜!?」
またすれ違っちゃったよぁと呟くカイルにリオンは声をかけた。
「ところでカイル様!今朝王子に何したんですか?」
リオンの突然の質問にカイルは「へ?」っとなってしまう。
「今日一日王子はイライラしてるし、理由を聞いたらカイル様が悪い!の一点張りですよ?」
ぁぁ、なるのどと言った感じでカイルは苦笑いを浮かべた。
「いや、今朝ちょっとしたことで怒らせちゃって」
「いったい王子に何をなさったんですか!?」
リオンは今日一日大変だったんですよ!っとカイルに詰め寄った。
「確かに今日のパーティー編成はおかしいなとは思ったんですけど、カイル様何かいいましたね!?」
さすがにそういわれると「ぐぅ」となり、何もいうことができずカイルはお手上げと言った感じで両手を胸元まで上げた。
「とりあえず、きちんと王子に謝ってくださいね!」
そういうとリオンは「おやすみなさい」と付けたし部屋を出て行った。
「はぁ〜、リオンちゃんにまでおこられちゃったなぁ〜」
カイルはため息とともに呟いて、王子が戻ってくるまで待つことにした。
タイミングを逃すと何でこんなに謝りにくくなるんだろう?
そう、自問自答していると、「かちゃり」と扉が開き王子が部屋へともどってきた。
「ぁ、王子、おかえりなさ〜い」
いつもの調子でカイルは王子を迎えた。
王子は予想していなかったのかやや驚いた様子でこちらをみていたが、すぐに踵を返し部屋をでていこうとした。
「ぁ!王子待ってくださいよ!」
カイルは王子に駆け寄り開きかけていた扉を無理やり塞ぎ「俺に謝らせてください!」と続けた。
ふぅと一息つくと王子はドアノブから手を離しカイルへと向き直った。
「王子、ゴメンナサイ!今朝のは本当に悪気なかったんです。
まさか王子が一番に俺のこと呼んでくれてるとは思わなくって。本当にゴメンナサイ!」
両手を顔の前に合わせ体を屈めて必死にゴメンナサイ、と続ける謝るカイルを見て王子はクスクスと笑い始めた。
それを見たカイルが不機嫌そうに王子をみた。
「ぃゃ、ごめん。カイルがあんまりにもカワイイからつい」
それだけいうと王子はカイル頬を両手で包み優しく引き寄せ、啄ばむようなキスを送った。
「それより俺の方こそごめん、ちょっとムカっときたから少しいじめてやろうとおもって。それより今日一日どうだった?寂しかった?」
そう聞かれカイルはぐっとつまってしまった。寂しかったかといえば寂しかった。
一つの事に囚われてグダグダして、そのことで自分がこんなに落ち込むとは思ってもみなかったのだ。
「王子には敵いませんね」
そう言うとカイルは苦笑いしながら両手を挙げ降参のポーズをとった。
それを見た王子はまたクスクスと笑いながらカイルの腕を取り自らのベッドへと導いたのだった。
+++++++++++++++++++後書きという逃げ道++++++++++++++++++++++++++++
王カイ第一弾ですが、続きます。
というか、コレを書いている間に内容を2回も飛ばしてしまいました(ぅω;`)
自分情けなさスギですOTZ
当初目標にしていたゴールとたどり着いたゴールが別ものに…
いろいろ勉強しなくてはなと実感ですOTZ