自分の感情をこうまでもかき回す存在がいるなんて。。。





コイゴコロ_4





刹那はその日、朝から強い違和感を感じていた。
その違和感がナンなのかわからず、
シュミレーションにも上手く集中する事が出来ないでいた。

「今日はどうしたんですか?いつもの刹那さんらしくないですよ?」

オペレーターのクリスティナから声をかけられた。
言われなくてもそんな事自分自身が一番良く分かっている。
クリスティナには悪気はないのだろう。
自分自身分かっていてどうする事も出来ないでいる自分へのイライラが、クリスティナへ向いた。

「そんな事くらい分かっている!」

つい抑えていた感情が口から出た。
そう、そんな事くらい分かっていた。
でも、何が違うかわからない。。。
どうしたらいいかも分からない。。。
こんな自分知らない。。。
自分で自分がわからない。。。

「今日の刹那さんこわいですよ〜」

オペレータールームからクリスティナが困ったような声をあげた。

「・・・すまない」

刹那は素直に謝った。
自分でも今日の自分はおかしいと言う自覚があったからだ。

「いえ、でも本当にどうかしたんですか?」

心配そうにクリスティナは声をかけた。。
自分でも分からない事を聞かれ刹那はとまどった。

「・・・」

ただ黙り込む刹那を心配したのかクリスティナが再び声をかけた。

「体調でも悪いんじゃないですか?」
「いや、そんな事は無い」
「そうですか?でも、今日は調子悪いみたいですし、シュミレーションこの辺で切り上げましょうか」

そう言うと、クリスティナはさっさとシュミレーション終了の準備を始めた。
正直その申し出はとてもありがたいものだった。
こんな状態では身に付くものも身に付かないと思ったからだ。

「悪いな・・・」
「いえ、きにしてません」

はっきりと、でも優しい声でクリスティナは答えた。

「それより、体調悪いなら早く部屋で休んでくださいね、ロックオンさんが風邪ひいて今日は休んでるんです」

その言葉を聞いた刹那は驚いた。
そういえば、今日は一度も姿を見ていないし、声をかけられていない。
何故か急に心配になってきた。
自分でもおかしいと思う。
でも、気になりだしたら止まらない。
急にソワソワしだした刹那の様子を見てクリスティナは本日何度目か分からない同じ質問を繰り返した。

「どうしたんですか?大丈夫ですか?」
「ああ、大丈夫だ。ソレよりロックオンが休んでいると言うのは本当か?」
「はい、スメラギさんから聞きました。間違いないと思いますよ」
「そうか・・・」

そうこぼし黙り込む刹那を見て、クリスティナは、
やっぱり今日の刹那さんって変なの、とオペレータールームで呟いた。

「クリスティナ、ロックオンの部屋は何処だ?」

自分でも信じられない質問だった。
クリスティナも一瞬驚いた様な声を上げたがすぐにロックオンの部屋番号を刹那に伝えた。

「お見舞いですか?でしたら風邪もらわないように気をつけてくださいね」

クリスティナは慌ててシュミレーションルームから出ようとする刹那にそうつけたし見送った。







もう何度目だろう、ロックオンの部屋の前で刹那は呼び鈴を押すべきかどうか悩み、ウロウロとしていた。
自分でもおかしな事をしている事は分かっている。
ココまで来てとも思うが、なかなかソコから一歩が踏み出せない。
ふぅ、とため息を付きながら、ロックオンの部屋の扉を見やった。
一体どうしたものか、見舞いなど一度もした事もなければ、ソコまで人に興味を持った事もなかった。
自分は一体何をしているんだ。。。
何度目かのため息を付きながら、自分の意気地の無さに笑いさえ覚えた。
極力人を避けてきた事がこんなところで裏目に出るなんて思っても見なかった。
見舞いと言う行動を取るなんて今までの自分には予想する事すらできなかった。
そうだ、今までみたいに気にしなければいい。。。
自分にそう言い聞かせても何故か心がソレを拒否した。

「どうした、入らないのか?」

いきなりかけられた声にドキリとした。
振り返るとソコには食事の乗ったトレイを持ったアレルヤの姿があった。

「どうした?」

部屋の前で立っていた刹那を不思議に思ったのか再び声をかけた。

「・・・いや」
「見舞いに来たのではないのか?」
「・・・まぁ、そんなところだ」

何とか声にすると、アレルヤはロックオンの部屋の呼び鈴を鳴らした。
すると、奥から声がし、扉が開かれた。
自分が悩んでいた行為をアレルヤは難なくこなして見せた。
ソレが何故か悔しかった。

「悪いなアレルヤ食事持ってきてもらっちまって」

すまないと両手を合わせてロックオンはアレルヤから食事の乗ったトレイを受け取った。

「っと、刹那じゃん!お前がわざわざ見舞いに来てくれるなんて思わなかったぜ!」

へへへ、と笑うロックオンの様子を見るからに、決して調子が悪そうには見えなかった。
何だか損をした気分になってきた。

「僕はコレで行くよ、風邪早く治せよ」
「おう、心配かけて悪かったな」
「じゃ」

そういい残し、アレルヤは去っていった。
残された刹那はどうしたものかと、その場に立ち尽くしていた。

「なんだ?見舞いに来てくれたんじゃないのか?だったら入れよ」

そう言われ、促されるまま刹那はロックオンの部屋へと入っていった。
ロックオンの部屋は驚いたほど簡素な物だった。
部屋には写真の一枚も無く、
必要最低限の物しか置いていないのではないかと感じた。
外で見せている姿と部屋に居る時の彼の姿は違うのではないか?
そう感じさせられる部屋だった。

「何だか悪いな皆に心配いかけちまって」

苦笑いをしながら食事の乗ったトレイを机に運び、まぁ座れよと刹那を促した。
刹那は思ったより思っていたより調子の良さそうなロックオンを見て安堵を覚えていた。

「元気そうだな」
「だろ?チョット熱があっただけで皆大げさなんだよ」

困るだろ?とこぼしながらロックオンはアレルヤから受け取った食事を口にし始めた。

「スメラギさんに、人に移す前に治せって言われちまってよ、治るまで外出禁止!とかいわれたんだぜ?酷いだろ?」
「・・・そうか」
「それにしても、刹那が見舞いに来てくれるなんて驚いたぜ」

それは、見舞いに来てしまった自分自身が一番驚いているのではないかと刹那は思った。
楽しそうに、一人で話を進めていくロックオンを見ていると何故か怒りを覚えてきた。
日頃人に健康がなんだ、食事が何だと言うくせに風邪を引いてシュミレーションを休んでいたのである。
何か言ってやりたい、段々そんな気持ちになってきた。

「一番に風邪を引いたって事は健康管理がなってない証拠なんじゃないのか?」
「ぅゎ、それキッツイ一言、でも本当だな、刹那に飯食え飯食えって言っときながらこれじゃぁな」

困ったな、と笑いながらロックオンは答えた。

「でも、刹那はまだ成長期だろ?きちんと飯食えよ、じゃ無いと身長伸びないぜ?」

相変わらず余計おせっかいな奴だと思う。

「食事はちゃんと取っているし、健康管理もしている」
「ソコ突かれると痛いなぁ」

また、ヘヘへとロックオンは笑った。
そして、アレルヤが持ってきた食事を完食し、ご馳走様でしたと手を合わせた。

「刹那と二人でジックリ話したことなかったなそういえば」

そう言うと、ロックオンは刹那に向かい合うようにして座りなおした。

「そんな事はどうでもいい、風邪をひいているのだろう、食事が済んだらさっさと寝て治せ」

ロックオンは驚いた顔をした。

「なに刹那、本当に心配してくれてるのか!?」

なっ、心配!?
そうだった、自分はロックオンの事が心配でココまで来たのだ。
こんな事初めてだった。

「ぁ、当たり前だ、でなければ何故ココへ出向く必要がある!」

何故だか急に恥かしくなってきた。
どうして自分がこんな思いをしなくてはならないんだろう。
そう思うと余計に腹が立ってきた。
本当にムカつくやつだ、何故自分はロックオンの見舞いに来てしまったのだろう。
風邪だと聞かされた時のあの焦りはいったいなんだったのだろう。

「それより、食事が済んだらさっさと寝ろ!」
「なんだよ、何さっきから怒ってんだよ」
「怒ってなどない!」
「怒ってんじゃんか」

刹那は本気でムカついてきていた。

「いいからさっさと風邪を治してしまえ!」
「へぃへぃ、わかりましたよ」

そういうと、ロックオンは自らのベットへ足を向けた。

「ぁ!そうだ」

何かを思い出したように刹那に振り返った。

「悪いけどそのトレイ、食堂にもどしておいてくれないか?スメラギさんから、完全外出禁止命令がでてんだよ」

な、こいつは人を心配させておいただけじゃなく、
食事の後片付けまで頼むなんて、何を考えているんだ。
カチンと来た刹那は思いもよらない行動を取った。
刹那はロックオンへ向き直りズンズンと歩を進めた。
そして、おもむろにロックオンをベッドへと倒した。

「な!」

不意を疲れたのか何の抵抗も無くロックオンはベッドへと倒れこんだ。

「いいからだまってろ」

そう言うと刹那はロックオンの唇に自らの唇を押し当てた。
そして、半開きになっていた口腔内に下を入れた。

「・・・っふ・・・」

クチュ、と言う音が静かな部屋に響いた。
刹那はひとしきりロックオンの口腔内を撫で回すと唇を離した。

「風邪は人にうつすと早く治るという」

そういい残すと、ロックオンは空になった食堂のトレイをもって、ロックオンの部屋を後にした。
取り残されたロックオンは状況が良く飲み込めずにいた。
押し当てられた自分より幾分体温の低い唇。
そして、嘗め回された口腔内に残るざらついた舌の感触。。。

「何考えてやがったんだあいつ。。。」

誰も居なくなった部屋でロックオンは一人呟いた。
部屋を出た刹那も困惑していた。
何故自分はあんな事をしてしまったのだろう。
分からない。。。
でも、何もせずにはいられなかった。







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やっとココまでって感じです。
当初の予定とは違った方向へ走ってきております。。。
この先一体どうなる事やらです。
自分の中では目指しているEDがあるのですが、
きちんとたどり着けるか不安になってきました(爆