初めての感触、初めての感覚、こんな感情知らなかった。。。
コイゴコロ_5
刹那は廊下を勢い良く歩いていた。
周りを見ることもせずズンズント進んでいく。
なぜ逃げている?
何か悪い事をしたのか?
わからない。
なら何故逃げている?
同じ質問が、まるでワルツの様に繰り返し頭をめぐる。。。
「ッチッ!」
憎憎しげに舌打ちをし、さらに歩く速度を速めようとした。
「そりゃ、おまえ恋だろう」
ハッとした。
刹那は歩く事をやめ回りを見回した。
正面から二人の若い男が歩いてきた。
年頃は刹那より少し上と言ったところだろうか。
少年達は楽しげに話をしながら正面から廊下を歩いて来た。
「やっぱりお前もそう思うか?」
はぁ、とため息を付きながら、一人の少年が答えた。
「でもスメラギさんかぁ、ハードル高そうだな?」
「だよなぁ」
少年達の会話を耳にした刹那は愕然とした。
まさか、そんな事は無い。。。
この感情が恋なのか?
いや相手は男だ、そんな事がありえるはずがない。。。
急に歩く事をやめ、呆然と立ち尽くした。
そんな刹那の姿を見つけた少年が声をかけた。
「よぅ、刹那じゃん。そんなとこで何突っ立ってんだ?」
いきなり声をかけられ刹那は驚いた。
「いや、何でもない」
何とかそれだけ言葉を搾り出すと、その場から走り去った。
「なんだあいつ、変なの」
「だな」
そういうと、少年達もその場から去っていった。
「何だったんだあいつ・・・」
そのころロックオンは刹那に押し倒された状態のままで居た。
一体何が起こったのかわからず、刹那の居なくなった天井をただボーット眺めていた。
急に起こった出来事に自分自身対応する事が出来ないでいた。
俺、キスされたよな。。。
しかもディープな奴。。。
でも何故だろう、男にされたのに気持ち悪いとは思わなかった。
おかしいと自分でも思う。
女性での経験は少なからずある。
でも、男からされた事は。。。
思い出したくも無い暗く汚い過去が思い出される。
あの時はとても気持ちが悪かった。
いくら生きていくためとはいえ。。。
しかし、今回は違った。
「あーーーー!どうなってんだ俺!」
誰も居ない部屋で思いっきり叫んだ。
当然返ってくる言葉など無い。
どうしたものか。。。
考えれば考えるほど信じられない答えが心をよぎる。
刹那の事は可愛い弟分だと思っていた。
まさか。。。
そんな目で見た事もなければ見ていたつもりも無い。
でも。。。
やはり、導き出される答えは一つ。。。
「なんてこった・・・」
信じられないとつぶやきながら寝返りをうった。
いつの間にこんな感情が芽生えていたのだろう。
どうしてこんな事になったんだ。。。
信じられない、こんな形で自分の気持ちに気づくなんて。
これから、どんな顔をして刹那に会えばいい?
それにしても、どうして刹那はあんな行動をとったんだろう。。。
自分の感情について悩む事は止めた。
恐らく何度考えても同じ答えが出てくるに違いない。
ソレよりも刹那のあの行動だ。
気になる。
気になりだしたら止まらない。
確かめたい、でも拒絶される事が怖い。
でも、確かめられずにはいられない。
「こうなったら当って砕けろだ!」
そう意気込むとロックオンは自分の部屋を後にした。
部屋に戻った刹那はさっき交わされていた少年達の会話が心に引っかかっていた。
「・・・恋・・・これが?・・・」
扉を背にただ立ち尽くしていた。
恋をしたことが無かった刹那は困惑していた。
恋なんて無縁の世界で生きてきた刹那にとってソレは初めての体験だった。
困惑している自分に気付いた。
相手は男だ、しかも自分よりもはるかに大きい。
身長差だけでも20p近くはあるだろうか。
しかも年上だ。
でも、恋だと聞いてから今までのモヤモヤが一気に晴れた気がした。
たった一日姿を見ないだけで集中できなくになった事も。
声を聞いていないだけで感じていた違和感も。
風邪だと聞いて、急に心配になった事も。
元気そうな姿を見て安堵したことも。
合わせた唇から失われる事がない熱も。
何もかも合点が行く。
「・・・これが、恋・・・」
同じ言葉を何度もつぶやいた。
なんて事だ、初恋の相手が男なんて。
おかしくて涙が出そうになった。
最初から上手くいかないであろうことがわかった。
でも、失いたくなかった。
この気持ちだけでも。。。
見ているだけでいい。
そばに居られるだけならそれでいい。
真剣にそう思った。
やはりこの世界には神なんて居ない。
居たとしてもその存在はとても残酷な物に感じた。
ロックオンは怒っているだろうか?
自分のした行動がとても不安なものに感じた。
ソレはそうだろう、男にキスされて嬉しい人間なんているわけが無い。
これからもずっとロックオンの傍に居たい。
切なる願い。。。
謝りに行こう。
元来、プライドの高いタイプである自分が自ら謝りに出ようなどと思った事もなかった。
けれども今回は違った。
拒絶される事が怖かった。
傍にいられないくらいなら。。。
この思いだけは消したくなかった。
勇気を出してロックオンの部屋へ行こう。
そして、素直に謝ろう。
そう決心した。
刹那は扉へくるりと振り返った。
その時、部屋の呼び鈴が鳴った。
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やっとココまで来ました。
何だか自分の中ではとても長かったです。。。
あと少しです。
お付き合いいただければ嬉しく思います☆